希望に胸膨らませ入学した中学校。
新しい文房具、初めての制服(ちょっとダサいけど)初めての部活動、初めてできる先輩。
心配なことも多いけど、楽しみにしている気持ちの方が勝っていたに違いない。
これなに?
学校から帰ってきて塾に行って、宿題をする・・・ノートを開いた三女(以下 娘ちゃん)が発した言葉が
「あれ?これなに?」
そう言って娘ちゃんは、私にノートを開いて見せた。
黒くて丸い汚れ・・・よく見ると、消しゴムのかすを丸めたように見える。
それが接着剤のように、ノートのページを張り付けていた。
「消しゴムのかす?」
そういう私に、だよねー・・・でも、こんな風に自然になる?私、やってないし。
そんなことを言いながら、パラパラとノートをめくると、他のページにもそれはあった。
まさか‥と思い、ほかのノートを確認すると他にも1冊だけ、同じようなことになっていた。
「いたずら?・・・でも、汚いなぁ~もう、だれよ。」
娘ちゃんは気味が悪いと思いつつも、だれか友達が悪ふざけをしたんだと思っていた。
次の日、友達に聞くこともせず忘れてしまったようだ。
ところが、1週間ほどしてまた同じような被害にあった。
「オカン、まただ・・。」
そういって見せた黒い塊は、前回のときより大きくなっていた。
しかも執拗に、何ページにもわたってやられていた。
「もう!明日、友達に聞いてみる。」
滅多に怒らない娘ちゃんだけど、悪ふざけにも程があると思ったらしい。
ケンカにならないようにって、親心に心配していた。
悪意
結果は、友達の誰も「知らない」といった。
隠すような関係でもないし、だますような子たちでもない。
「てか・・それ気持ち悪いよ。」
友達にそう言われて、ちょっと落ち込んで帰ってきた。
「先生に言うだけ言っとく?」
と提案すると、なんていうの?説明できないよ。と肩を落とした。
気を取り直して宿題を始める娘ちゃん。
「あっそうそう・・シャーペン自分で組み立てたんだけど、なんか上手くできなかった。部品がたりないのかな?」
そういって私にシャーペンを差し出した。
なんで自分で組み立てたのか聞くと、ペンケースの中でもまれているうちに部品が緩んだみたいでバラバラになった・・との説明。
それおかしくないか?そんなことでバラバラになるか?
「でも、なってたし・・。このシャーペン2~3回なってるし。」
えっ?だって買ったばっかりでしょ。最初から?
「ん~ん。最近だよ。」
それ以上、聞くことはできなかった。
「それ・・いじめじゃない?」
そう言ったら、まるで呪文のように現実になってしまうようだし、なにより娘ちゃんが不安になるのが良くないと思えたから。
でもそんな不安や心配をバカにするように、週1くらいの間隔でノートにいたずらされていた。
シャーペンもバラバラにされることから、ペン先を潰される事態にまでなっていた。
現実になる恐怖
明らかに悪意を向けられたことがあるだろうか?
大人でも薄気味悪い今回の経験は、娘ちゃんにとっては衝撃だったに違いない。
ようやく担任の先生に言うことができた。
熱心に話を聞いて、バラバラになったシャーペンを写真に撮ったりして前向きに対処をしてくれていた。
でも、そこまでだった。
相変わらずペンケースを微妙に荒らされ、ときには机とイスがぞんざいに扱われていたりした。
ペンケースを片付けたり、それなりに対処をし始めた娘ちゃんは、数人の子たちが自分の机周りを囲むように立っているのを目撃した。
どうかしたのかと聞くと、慌てた様子で別に・・何でもない・・と立ち去ったそうだ。
机の上には片付けたはずのペンケースが、ファスナーが開いた状態で置いてあった。
このとき「やっぱり・・Yさんだったんだ・・。」と確信したそうだ。
これで少しは納まるかと思いきや、一層激しさを増していった。
この時期の男子はプリントを集めたりするのに、女子が触った物をわざとつまんで見せたりする。
これを逆手にとったYさんたちは、女子として娘ちゃんにやり始める。
Yさんたちグループは、娘ちゃんのそばをわざと通り、通り過ぎた後に制服を払う仕草を大げさにする。
それをはしゃぎながらやる。
男子の一部もこれに乗っかる。
こうして負のループはできあがった。
この頃の娘ちゃんは、部活動だけが心の拠り所になっていた。
ところが同じ部活にクラスメイトがいたので、その子が部活にその感情を持ち込んでいた。
その子だけだが、その子に無視されるようになった。
先生が間に入っても、「そんなつもりはなかった。疲れてイライラしていたかもしれない。」だけ。
部活の成績が優勝なこの子にこれ以上、責めるすべは先生たちになかった。
このころから娘ちゃんの体調がおかしくなっていった。
ご飯を食べなくなる、学校に行く前に何度も服装のチェックをする、朝になると具合が悪くなる、朝起きられない・・・。
そして他の先生からも「やせたね」と言われるほど、やせ細ってしまった。
もともと喘息とアトピーを持っていた娘ちゃんは、発作ばかり起こし肌はかつてないほどボロボロ。
いくら薬を塗っても、医者を変えても変化はなかった。
そしてある日突然、教室に入れなくなった。
教室の前まで行ったが、ドアが開けられなくなってしまった。
その日、学校まで送っていった私は、駐車場から学校に電話を入れていた。
「もしかしたら、教室に入れないかもしれません。どなたか見に行ってもらえませんか?」
こうして娘ちゃんと私の苦登校が始まった。
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