研修期間も終わり、各営業所に配属になった私たちは、いよいよデビューしていきます。
初めての乗車は、同じ営業所の先輩ガイドの仕事にサポートとして付きます。
実際にどういう手順で仕事をするのか、肌で感じていくわけです。
初めての仕事は、一般のお客様の日帰りのお仕事でした。
「屋形船で春風を感じてランチを食べよう。」なんて感じの日帰り旅でした。(記憶があいまい)
私がしたことと言えば、ご挨拶とお客様の人数確認くらいでしたが、お別れのあいさつの後にお客様から
「これからお仕事頑張ってね。」「立派なガイドさんになってね。」
などの声をかけていただき、感動して泣いてしまったことを覚えています。
「よおし!やったるぞ!」と謎のやる気に満ち満ちていたのを思い出します。
可愛いお客様
こうして新人ガイドは、日帰り旅行1回・一泊旅行1回を先輩について勉強します。
回数に決まりはなく、不安があればもう少し先輩に付きたいと希望する子もいます。
ですが、仕事量もあるので会社としては一日でも早く、バス1台に1ガイドでさばきたいところでしょう。
そして新人ガイドたちは、ひとり立ちをしていきます。
最初の頃のお仕事は、春の遠足が多いですね。
ちょうど春の遠足シーズンなので、新人ガイドのお仕事は遠足が多いのです。
とくに幼稚園の遠足が多いので(ほぼ毎日)可愛いお客様にメロメロな日々です。
小学校や中学校、高校生のお仕事もありますが、新人には幼稚園が多いです。
幼稚園の子供たちは、大人のしゃべることを案外よく聞いてくれるし、先生の言うことをよく守ります。
ガイドのことも「先生」って呼んでくれて、本当に可愛くてメロメロです。
こうして可愛いお客様に、自信を付けてもらいます。
あいさつは元気よく
最初は日帰りのお仕事ばかりですが、ひと月も過ぎると一泊のお仕事も出てきます。
こうなると緊張もしますが、一人前に扱ってもらえるのが嬉しくなります。
全然、半人前なんですけどね。
この頃は、運転手さんがノウハウを教えてくれます。
海方面、山方面、それぞれ温泉地がありますが、だいたいルートは決まっていて途中の休憩場所も決まっています。
ドライブインですね。
ドライブインには乗務員専用の休憩所があります。
そこで乗務員は休憩をするのですが、そこには他の営業所の乗務員もいるんですね。
もちろん新人ガイドや、指導ガイド以外は顔がわかりません。
ですから休憩所で会ったら、まず挨拶をするように指導されます。
「お休みのところ失礼いたします。○○営業所のミーチャと申します。よろしくお願いいたします。」
という感じですね。
同じ会社の乗務員としてということもありますが、わりと運転手同志は情報を共有したりするので仲がいいんですね。
「ウチの営業所の新人なんだ。」って、ちょっと保護者的な空気があるんですね。
実際、年齢的には親子か親よりも上の人ばかりでしたので、運転手さんも保護者のように接してくれましたね。
お客様を下ろして営業所に帰るバスの中では
「人を見る目を持たなくちゃいけない。」とか
「酔ったお客さんに、イヤな思いもさせられることもあるけど、お客様だからな。辛抱も大事だぞ。」とか
「借金はするもんじゃない。」(笑)とか。
本当に周りの大人に育てられました。(みなさん ありがとう)
そんな状態で毎日一生懸命でした。
そして1年の歳月はあっという間に過ぎて、忘れていたあのことに巡り合うのでした。
そうです・・・。
あの出る・・・ホテル・・・。
こうきたか~
その日は前触れもなく突然にやってきました。
予定表を見ると「伊豆○○温泉 一泊」と書いてありました。
一緒に見た運転手さんは
「おっ良かったな~。」なんて言っていました。
今もそうかもしれませんが、伊豆は乗務員にも人気がありました。
そして私も「ラッキー」くらいに思っていました。
しかし何か引っ掛かかりを感じていました。
もう一度よく見ると「伊豆○○温泉 一泊 ホテル○○」
ホテル○○・・・ホテル○○・・・ん?まさか・・・。
温泉地名もホテル名も、先輩に聞いた通りです。
ラッキーがアンラッキーに変わるのは、一瞬でした。(´;ω;`)
でも希望はあります。
これは全くの都市伝説で、でたらめであればいい。(そうあってほしい)
または、人気のホテルなので乗務員は飛ばされるかもしれない・・ということです。
はたして・・・ホテルに到着し、お客様は人気のホテルということもありウキウキでした。
バスを駐車場にまわすと、ほかのバスも入っていて結構な台数でした。
これは、飛ばされるかも?なんて、考えていました。
車内の清掃も終わり、ホテル側に宿泊がどうなるのか聞くと
「ご案内いたします。」
マジか・・・
「この後になりますと、他にご案内をさせていただく事になるんですが。」
「そうなの?よかったな~。」運転手さんは嬉しそうです。
ついてね~飛ばされたかった・・・。
でも、まだ大丈夫。
乗務員の部屋はいくつかあるんですから。
「こちらです。」
!・・・え~と、先輩は確か・・・トイレの前の部屋じゃなければ平気って言ってたよね。
これ・・トイレの前の部屋なんですけど~。
いや、見方によっては斜め向かいに見え・・・ませんね。
しっかり!真ん前です!
「今日は満室なんですよ。」とホテルの人。
え?ということは、私が最後に残ったこの部屋に当たったということ?
もう、ドンピシャすぎて笑えません。
お部屋はシンプルですが、まだ改装して何年も経過していないのでキレイです。
「噂だ・・噂・・都市伝説だ。もし出ても、なんか特殊体験でレベルアップできるかも?いや・・・したくね~。」
もうちょっとしたパニックですよね。
考え抜いた末
- 電気は消さない
- なるべく寝ない
- 全く気にしてない風に振る舞う
これが私が考え付く防御策でした。(笑)
そして実行。
翌日には、ただの寝不足の自分がいました。
「なんだよ・・でないのかよ。いや・・いいんだけれども・・。」
本当に貴重な経験でした。
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